今更山口未桜の『禁忌の子』を読む

先日、「関西一信頼できる書評家」ことFM802のDJである浅井博章さんが『白魔の檻』を紹介していて読みたくなったので前作に当たる『禁忌の子』から読み始めることにしました。

ご存じの方も多いと思いますが、本作はミステリ小説の登竜門と言われる鮎川哲也賞を満場一致で受賞した山口未桜さんの処女作であり、なおかついきなり2025年度の本屋大賞にもノミネートされるという快挙を成し遂げています。(ちなみに第4位)

山口未桜さん自身は医師と小説家の二刀流であり、なおかつママさんという異色の経緯を持っている作家です。有栖川有栖先生のお弟子さんでもあり、彼の薫陶を受けた上でデビューしたという経緯があったりします。

あらすじ

芦屋と尼崎の間に位置する鳴宮市の海岸で男性の遺体が発見される。遺体は「キュウキュウ十二」と名付けられた上で海岸の近くにある兵庫市民病院に搬送された。
病院の医師である武田航は、その遺体を見て奇妙な違和感を覚えた。

「――キュウキュウ十二は、俺に瓜二つだった」

キュウキュウ十二は、航と瓜二つの顔を持っていたのだ。なぜ俺と同じ顔を持つ遺体が発見されたのか。遺体について詳しく調べるために航は同僚である城崎響介とともに遺体の謎を追っていくことに。
遺体の出生について調べると、大阪の福島区にある不妊治療専門のクリニックにたどり着くのだが、遺体の出生に関わった医師が密室の中で首吊り遺体として発見されてしまう!

俺と同じ顔の遺体。密室上の首吊り遺体。一見繋がりがなさそうに見える2つの事件だが、それは航の悲しい過去に直結するものだった……。

ざっくり感想

キミ、ホントに新人作家?

処女作にして完成度の高い医療ミステリで「海堂尊の後継者が出てきた」と思いましたね。これは満場一致での鮎川哲也賞受賞も納得だしいきなり本屋大賞ノミネートも納得できます。
『禁忌の子』というタイトルから分かる通り「キュウキュウ十二」の正体については大体察しが付きますが、そこに至るまでの緻密なロジックにビックリさせられました。

基本的な舞台は西宮市がモデルと思われる鳴宮市という兵庫県の街ですが、芦屋と福島区も出てくるので妙な親近感を覚えました。ちなみに作者は生粋の兵庫県民だそうです。(つまり私と同じ)
度々挟まれる不妊治療の蘊蓄に頷きつつ小ネタである阪神タイガースのネタにはクスッときました。多分推しの選手が私と同じなんだと思います。

衝撃的な真相は自分の目で確かめてほしいのでネタバレは敢えて書きませんが、結末はかなり悲しいモノでした。でも、個人的には希望が持てるラストだと思いました。それが航と奥さんの選んだ道なら、受け入れることも必要なんだと思います。

続編である『白魔の檻』は探偵役である城崎響介はそのままで、新たな相棒役として研修医の女の子が出てくるらしいのでこちらも注目したいです。レビューはそのうち書きます。

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