デビュー時からメフィスト賞志望者として金子玲介を追っかけている人間が『クイーンと殺人とアリス』を読む
メフィスト賞座談会において満場一致での受賞となった『死んだ山田と教室』を引っさげてデビューした金子玲介の最新作『クイーンと殺人とアリス』を購入したので読みました。
金子玲介とは
『死んだ山田と教室』で文壇に大きな隕石を落とした新進気鋭のメフィスト賞作家。『死んだ山田と教室』は新人ながらその年の本屋大賞にノミネートされるという快挙を成し遂げています。
そして、『死んだ山田と教室』を刊行してからも一風変わったミステリや純文学など執筆する小説のジャンルは多岐にわたっています。
そんな彼が5作目に贈るのは館モノの本格ミステリ。実はメフィスト賞の座談会でも取り上げられていましたが惜しくも受賞を逃してしまったという経緯があります。本作が受賞していたらメフィスト賞の歴史ももう少し変わっていたかも?(2022年上期受賞の『ゴリラ裁判の日』から2023年上期受賞の『死んだ山田と教室』までしばらく空位が続いていたので)
↑『クイーンと殺人とアリス』が取り上げられた座談会はここで読めます
あらすじ
高校のクイズ研究会に在籍しながらアイドルを夢見る少女・想空(そら)と七色。彼女たちは帽子島という孤島の館でアイドルの最終オーディションを受けることになった。
オーディションを受けることになったアイドルのユニット名は「Queen&Alice」という名前で、かつて一世を風靡したが現在では落ちぶれてしまった鯨井という名プロデューサーが手がける「謎解きアイドルユニット」だった。
Queen&Aliceの候補生は想空と七色の他に、「ラストチャンス」としてオーディションに応募した真昼、元バンドマンの聖来、クールなメガネっ娘の瑠璃、コテコテ関西人の優奈、地下アイドルの茜、そしてミステリオタクの心愛という面々が揃っていて、最終オーディションは5勝先取の早押しクイズで2敗した者から順に脱落していくという一風変わったものだった。
クイズ研究会のプライドに賭けて順調に早押しクイズを答えていく想空と七色だったが、最終オーディション2日目の朝に聖来が遺体で発見されてしまう。
実は、前日に「脱落者」という形でフェイクの遺体として血糊でメイクした聖来が横たわっていたので、今回もフェイクの遺体だろうと思われていたが、みんなが確かめたところ確かに聖来は死んでいたのだ。
「この殺人事件を解決した者はアイドルとしてメジャーデビューさせる」そう宣言した鯨井に対して、七色は探偵役を務めることになるのだが……。
ざっくり感想
本作はメフィスト連載時に読んでいましたが、改めて単行本で一気読みするとまた印象が変わって見えました。
本格ミステリにアイドルという一見ミスマッチな組み合わせですが、この組み合わせが意外と良い化学反応を起こしています。
ストーリーはそれぞれ想空と真昼の視点から描かれていますが、探偵小説としての想空、普通の少女としての真昼という2つの異なる視点から導き出されるロジックが面白いと思いました。個人的には山田よりも本作でメフィスト賞獲って欲しかったです。
お察しの通り「Queen&Alice」の元ネタはエラリー・クイーンと有栖川有栖というあまりにも安直なネーミングですが、金子先生がこの2人のレジェンド推理作家から影響を受けたのは明確でしょう。リスペクトもしっかりしていました。
ネタバレになるので詳細は伏せますが、終わり方はいわゆる「バッドエンド」という分類に入るモノでしたが、それはすなわち「現代アイドルの闇」と言っても過言ではないかもしれません。その結末は是非自分の目で確かめてください。
小ネタ
クイズを題材としているので早押しクイズにはあらゆる問題が出てきますが、その中に2006年のM-1ファイナリストに関する問題があります。
その年のM-1ファイナリストといえばあるアマチュアコンビがファイナリストに残りましたが、皆さんは分かりますでしょうか?ちなみに優勝はチュートリアルです。
私と金子先生が同世代というのもありますが、恐らくお笑いの趣味もほとんど同じなんだと思います。個人的にはニヤリとしました。
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