原作付きアニメにおけるアニオリ映画の時代の終焉

本日(2025年10月5日)、『SPY×FAMILY CODE : White』がめでたく地上波初放映という運びとなりましたね。番組表を見た時点で察してましたが大分カットされていましたけど……。

SPY×FAMILYとは?

遠藤達哉原作による週刊少年ジャンプ+で配信中のウェブトゥーン作品。とある任務で敵国に潜入したスパイの黄昏(ロイド)、殺し屋の母(ヨル)、訳ありな人の心を読む超能力少女(アーニャ)、そして未来が見える犬(ボンド)の3人と1匹が繰り広げるギャグありシリアスありのドタバタホームコメディで、ジャンプラでは龍幸伸の『ダンダダン』とツートップを飾る人気を誇っています。配信開始時から「アニメ化希望」という声が多数寄せられていて、2022年にテレビ東京系でアニメが放送開始。現在3期まで制作されています。

そんな中で、2023年の12月にシリーズ初となる劇場版『SPY×FAMILY CODE : White』が封切られました。遠藤達哉完全監修のアニメオリジナルシナリオという触れ込みで、主題歌は1期前半の主題歌を担当したOfficial髭男dismと星野源が務めていました。

アニオリの難しさ

しかし、個人的に『~CODE : White』はお世辞にも良い映画とは言えませんでした。シナリオは「調理実習でステラを取るために幻のお菓子のレシピを探し出すうちに世界の命運を握ってしまう」というモノですが、アニオリの悪いところが染み出ていると思いました。

※ステラ:アーニャが通う学園において「良き行い」をするともらえる星のバッジ。8つ集めると学園において「皇帝」として認められる。逆に「悪い行い」をすると「トニト」という雷のバッジが与えられ、8つ集まると退学処分となってしまう……。

個人的に悪いと思った部分

  • 映画公開前に放映されていた2期のハイライトとなる長編エピソード『豪華客船編』の後にわざわざ旅行に出かける必要があったのか?
  • そもそもマイクロフィルム(劇中のキーアイテム)をチョコレートの中に隠す必要性がアーニャを引き立たせるためでしかない。
  • ゲスト声優(中村倫也と賀来賢人)が棒読み。
  • フィオナ(ロイドの仕事仲間)のキャラが変。いくらロイドのことが好きでもそこまで感情は剥き出しにしないはず。
  • ロイドとフィオナの任務のせいでヨルが勘違いして家族に亀裂が生じるシーンがあるがその後の顛末を考えるとアニオリとして展開がありきたりすぎる。
  • 中盤におけるアーニャの下ネタ(ウ○コの神様)が蛇足。千葉繁の無駄遣い。
  • ラスボスであるタイプFの存在がヨルの咬ませ犬でしかない。
  • 結局調理実習は爆発オチでノーステラ。原作と整合性を持たせるためなら仕方ないが「知ってた」としか言い様がない。

といった具合で「悪い原作付きアニメのオリジナルストーリー」でしかありませんでした。それならまだ『豪華客船編』を映画化した方が良かったと思います。

アニオリ時代の終焉

現在、『鬼滅の刃』や『チェンソーマン』、『ハイキュー!!』といった「TVシリーズの続きを劇場版としてやる」という手法は一般的なモノとなっています。私が知る限り元祖は多分『新世紀エヴァンゲリオン』だと思いますが……。

鬼滅にしろチェンソーしろハイキューにしろ映画は「TVシリーズの続き」でありながらかなりの興行収入をたたき出しており、鬼滅に至っては興行収入300億円超えというモンスターコンテンツとなっています。

一方、機動戦士ガンダムのアニメ映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』は2004年~2005年に放送されていた『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の続編に当たるアニメ映画でありながら社会現象となり、系列のガンプラも発売後即完売で再販待ちという状態が公開から1年以上経った今でも続いています。多分事実上のガンダムシリーズ最新作である『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』よりも売れていると思います。

そうやって考えるとSPY×FAMILYの映画が商業的にもストーリー的にも失敗した理由は明確です。ちなみに『~CODE:White』の最終的な興行収入は約60億円とあまり良いものではありませんでした。これは配給元である東宝としては大赤字でしょう。その後東宝のアニメ事業部は『ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』の大ヒットで赤字をペイしましたが……。

原作付きアニメのアニオリ映画でも『名探偵コナン』は毎年の様に興行収入100億円超えというモンスターコンテンツとなっていますが、理由としては2014年に公開された『~異次元の狙撃者』で原作の要素を匂わせたからであり、それ以降も原作の要素を取り入れた作品(例:『~ハロウィンの花嫁』・『~100万ドルの五稜星』・『~隻眼の残像』など)が数多く公開されているので厳密にはアニオリとは言い切れません。

そういうところから考えても、やはり「原作付きアニメのアニオリ映画の時代」は終焉へと向かっているのかもしれません。次にSPY×FAMILYが映画化するときは原作の長編エピソードである『ロイドvsユーリ編』か『ガーデン編』を映画化した方がいいかもしれません。ちなみに3期のハイライトである長編エピソード『バスジャック編』はすでにTVシリーズとしての放映が決まっています……。

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