【実につまらない】『ブラック・ショーマン』を見ました

映写機トラブル続きのOSシネマズミント神戸を避けて109シネマズHAT神戸で『ブラック・ショーマン』を見てきました。分かってる人はミントを避けてHATに行くのでめちゃくちゃ混んでました。

『ブラック・ショーマン』とは?

日本におけるミステリ小説のトップランカー、東野圭吾による小説。いわゆる「キャラクターもの」の小説であり、今回映画化された『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』はシリーズ第1作に当たります。ちなみに光文社で東野圭吾のキャラクターものが刊行されるのは意外にも本シリーズが初めて。シリーズ自体も割と新しく、2020年に『~名もなき町の殺人』の単行本が刊行・2023年に文庫化されています。

2024年1月にはシリーズ第2作である『ブラック・ショーマンと覚醒する女たち』が刊行。本作の主人公である神尾武史は加賀恭一郎や湯川学、新田浩介と並ぶ東野圭吾の名物キャラクターになれるかどうか注目が集まっています。

映画化に際して原作・東野圭吾×制作・フジテレビ×主演・福山雅治という最強タッグが再び実現。スタッフは福山の代表作である『ガリレオシリーズ』のスタッフや木村拓哉主演による『マスカレードシリーズ』のスタッフ(=『HEROシリーズ』のスタッフ)とは違い『コンフィデンスマンシリーズ』のスタッフが関与することに。今までのフジテレビにおける東野圭吾作品とは一線を画す映画になりそうですが……?

あらすじ

小さな町で元中学校教師が殺害される事件が発生。被害者の娘である神尾真世は、事件の話を聞き東京から帰省することに。
真世が事件現場に向かうと、偶然彼女の叔父である武史と鉢合わせることに。武史は世界的な天才マジシャンで、訳あってラスベガスから日本に帰国していたのだ。
事件現場で無礼な行為を働く武史に真世と刑事は困惑、挙げ句の果てに真世は武史を事件の犯人だと疑う始末。

そもそもの話、かつて真世が住んでいた町は売れっ子漫画家・釘宮克樹の出身地であり、町では彼の代表作『幻脳ラビリンス』を町おこしに使えないかと躍起になっていた。しかし、コロナ禍で町おこしは頓挫。今では「名もなき町」として寂れていた。
それでも、克樹を知る人物は町おこしを諦めない。地酒や記念館など、町おこし出来るモノならなんでも使いたいと考えていたのだ。

そんな中、武史と真世は葬儀の手配を行うことに。武史の考えだと、「参列者の中に犯人がいるのではないか」ということだった。
スピーディーかつ潤滑な手配によって葬儀は無事に執り行われ、ついでに容疑者リストも武史による若干手荒な方法で入手。早速、容疑者のあぶり出しを行うことに。

容疑者候補は真世の同級生であり、なおかつ真世の父親の教え子でもあった。
「たとえどんな真実でも私は逃げない」そう誓った真世は、武史とともに事件を追っていくのだが……。

実につまらない(ネタバレあり)

フジテレビ×東野圭吾×福山雅治だと普通なら「勝利の方程式」という認識になりますが、残念ながらつまらなかったです。多分一連のフジテレビ問題が福山雅治に飛び火したことでケチが付いたのもあると思われますが……。

結局のところ事件の犯人は釘宮克樹でしたが、東野圭吾作品の割に動機が弱いと感じました。事件の動機は「亡き友人が温存していたアイデアを元に『幻脳ラビリンス』を描き上げたのに、それが先生にバレてしまったから」です。弱い。

東野圭吾作品の動機といえば「恋人を守りたかった」(容疑者Xの献身)や「娘を犯した少年グループに報復したかった」(さまよう刃)、「事故でこの世を去った友人の父親への復讐」(麒麟の翼)など「犯人側にも同情の余地がある」というのが特徴ですが、釘宮克樹には同情の余地がなく自業自得としか言いようがありません。いくら大切な友人が故人だからといっても、アイデアの剽窃はダメだと思います。

武史に追い詰められ自死を図ろうとした釘宮でしたが、すんでのところで武史が「魔法」をかけて巨大なクッションを出現させ自死を阻止させるという展開もありきたりでしたし、落下中のCGが妙に安っぽいと感じました。フジテレビはここまで地に落ちたのか……。

武史の推理ショーにおいて真世の同級生たちが全員クズだということが明らかになったことも作品の評価を下げる要因になったかもしれません。
「名もなき町の殺人」というタイトルが示しているモノと言ってしまえばそれまでですが、閉鎖的な環境において同級生たちは何らかの秘密を抱えていたことになります。

秘密の例

・社長がコロナで亡くなったことを良いことに裏金を作り出していた
・その裏金で『幻脳ラビリンス』の記念館を作ろうとしていた
・容疑者の1人であるIT社長には妻の他に愛人がいた
釘宮は亡き友人から「アイデアノート」を受け取っていた←コレが殺人の動機に……。
・先生はそういう釘宮の弱みを握っていた

もう上げればキリがないほどクズのオンパレード。これじゃあ真世が可哀想ですよ。

一応、後日譚で武史が真世に「死んだ父親を生き返らせる魔法」をかけたシーン(恐らく『~覚醒する女たち』への匂わせ)は良かったですが、それでも「続編は厳しい」と思ってしまいました。

一度染みついたキャラクターの匂いは中々消せない

お察しの通り、世代的に「福山雅治=湯川学」のイメージが定着している中で福山雅治が神尾武史を演じることになったのは悪手だったと思います。
特に真相にたどり着いたシーンで「例のBGMとともに突然方程式書き出すんじゃないか」って思ったのは言うまでもありません。
ちなみに本作のサントラは佐藤直紀さんが手がけていますが、メインテーマは福山雅治自ら書き下ろしたインストゥルメンタル曲です。

ぶっちゃけ『マスカレードシリーズ』における木村拓哉も「木村拓哉=久利生公平」という色眼鏡で見てしまうのでいつ「ちょ待てよ!」と言い出すかついつい待機してしまいます。まあHEROとマスカレードシリーズのスタッフは同じですが……。

という訳で、本作は『ガリレオシリーズ』(初期)や『加賀恭一郎シリーズ』のような人間ドラマを期待して見ると後悔するし、『マスカレードシリーズ』のような極上ミステリを期待してもガッカリさせられるという中途半端な作品になってしまったのは言うまでもありません……。2000円返せ。

っていうか、今後フジテレビの映画は大丈夫なんでしょうか?10月公開予定の『秒速5センチメートル』はコケる匂いしかしませんが……。

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